FC2ブログ

大阪豊中、ブラジルコーヒーの店「Cafe do BRASIL TIPOGRAFIA」のブログ。メニューやお店情報、ブラジル、音楽、ジャズ、コーヒー、焙煎、映画、活字等、毎日更新!

特需

狭い、狭い世界に限ったことではあるが、
「ジャズ批評」特需が万延している。

掲載盤をペンを片手にチェッ~ク! 

VOL.4のピアノトリオ特集掲載盤があちらこちらのショップに並んでいる。
実店舗、WEBショップは問わず、
今まではほんの一部の好事家でなければ
見向きもしなかったような無名アーティストのアルバムが並ぶ、並ぶ、そして並ぶ。

当然、マニアは踊らされる。

他人事のように書いているが自分自身もまんまと穴にはまりこんでいる。

結果的には自分の嗜好に合うか、合わないかはともかく一度は聴いてみたい、
さらにはすべてを聴いてみたいと不可解なマニア心をくすぐり、
赤ペンと掲載誌を片手にレコード屋を往復する。
流通量が少ないため、在庫はすぐに売り切れ、
必然的にしばらく入手困難となり、レア盤扱いとなる始末。
「入手困難」「レア」とか煽られると、それはそれでまた欲しくなる。

我に返ると馬鹿げている。

どんなに足掻いても、
所詮世界のすべてのジャズを聴くことができるわけでもなく、
また聴かなくても世界は何も変わらない。

ジャズ・マニアの住む世界など狭いものである。
この特需が何か経済波及効果を生むはずなく、
多分ショップ単位で見ても、この掲載盤が売れたからといって
月間売上が対前年倍増したとかはあまりないだろう?
何かが売れれば、同時に何かが売れなくなるの世の常。

でも、当のミュージシャンにとっては、青天の霹靂のような
日本からのオーダーをどう受け止めているのだろうか?

ここからは自分の単なる想像である。
メジャーレーベル所属の有名ミュージシャンならともかく、
例えばどこかの国の田舎町で自主制作盤で頑張っている無名のアーティストなら……。

             

知らぬ間に雑誌に自分のCDが紹介されていた。
発売直後ならまだしも、何年も前に録音・発売した盤である。
当人すら忘れかけていた。
もともと大して売れず、当時プレスした在庫は少量残ったままある。
それが行ったこともない極東の彼方の国から数十枚単位で発注がくる。
きっと当人自身、
 
  「ジーザス・クライスト!なんじゃこりゃ~????????」

と驚いたこと必至だろう。
「よっしゃ!!」とここぞとばかりに在庫を日本へ送る。
再び別会社からオーダーが入る。
余程身の程をわきまえた謙虚な人でない限り、勘違いもあるだろう。

  「苦節10年、ついに俺の時代がやってきたぜぇ!」

と意気込み、勢いづいて追加プレスを行う。
昔のLPと違いCDの場合、プレスのリスクはそれほど高くない。
追加プレスも日本へ送る。
というより、この盤が現在売れているのは日本だけである。
気が付くと、
 
  「俺の音楽を理解できるのは日本人だけだ」

と贔屓目にこの国を感じる。
彼はいきなり「寿司」「刺身」を食し始める。
「根性」「真実」とか変な漢字の入ったTシャツを着込み田舎町をかっぽする。
来るべきジャパン・ツアーに備え日本語を勉強し始め、
「コンニチハ」「ニホンダイスキ」とかつぶやき始める。
彼にとっては、日本の雑誌で紹介されたことがこんなにも人生を変えるのだ。
そしてある日突然、波は終わる。
はじけない泡(バブル)は決して存在しない。
一通りの流通を終え、旬を過ぎた盤はすぐに忘れられる。
レア盤はその価値を失い、単にレアなだけに戻る。
ジャパン・ツアーの妄想はやがて色あせて行く。
ふと我に返り

  「あれはいったいなんだったんだろうか?」

と自問し、

  「あの頃はよかった。思えばあれが俺の人生の華だったな」

と嘆き、やがて元の売れないミュージシャン生活に戻っていく。

以上があるジャズミュージシャンの(想像上の)物語である。

             

この特需はいつまで続くのだろうか?
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃソンソン」とばかりに
ちゃんと躍らされながらも、
マニアの業の深さに時々空しくなるのだ。


スポンサーサイト
プロフィール

TIPO

Author:TIPO
大阪豊中、ブラジルをコーヒーと音楽で楽しむ店“Cafe do BRASIL TIPOGRAFIA(チッポグラフィア)”の店主(と時々連れ合い)。2005年12月に開店して以来、気合で毎日更新中。果たしてどこまで続くのか意地になってます。

twitter
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブログ検索
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カレンダー
11 | 2008/12 | 01
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -